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京都大学 医生物学研究所

ウイルス研究の潮流シリーズセミナー: ウイルスと宿主は一蓮托生:寛容が支える共存関係

日時: 2017年10月6日(金)16:00 〜 17:30
場所: 京都大学ウイルス再生研2号館 1階セミナー室(旧ウイルス研本館)  
演者: 長﨑 慶三 教授 (高知大学農林海洋科学部 水圏ウイルス研究室)
演題: ウイルスと宿主は一蓮托生:寛容が支える共存関係

講演要旨

1970年代、電顕観察により、藻類細胞中に六角形または五角形の粒子構造がみられるという報告が多く成された。断面像が六角形か五角形の粒子、ということはおそらく正二十面体。藻類に感染しているであろう「ウイルス様粒子(VLP:virus-like particle)」の発見は研究者たちの興味を集めた。細胞内にランダムに(時に整然と)並ぶ正多角形の集まり。彼らの多くがその姿にみとれているうち、ほどなく2種類のウイルスが単離された。淡水産ゾウリムシの共生クロレラを宿主とするウイルスと、海産プラシノ藻Micromonas pusillaを宿主とするウイルス。二者が研究室内で培養可能となった1980年前後から、俄然、藻類ウイルス研究分野は面白くなる。特に、ウイルスの感染過程や宿主特異性を巡る研究は興味深く、当時大学院生だった演者もすっかりその世界に魅了された。やがて、他の様々な藻類を宿主とするウイルスが世界各地で単離され、藻類ウイルス研究用の材料は随分と増えた。ウイルスの単離は、宿主藻類クローン培養を死滅させる微小因子の分離に他ならない。宿主を激しく殺すウイルス株をあえて選択し、精査することで、藻類ウイルスの姿を知ろうと研究者たちは競い合った。が、それは一側面の解析に過ぎない。ウイルスは宿主を許し、宿主はウイルスの感染を許す、それぞれの寛容性を有しつつ、両者は共存し続ける。ウイルスと宿主の本来の関係はそうした「共存性」にあり、しいていえば従来の藻類ウイルス研究は、「殺藻」という特殊なフェーズにのみ注目してきたのかもしれない。近年,宿主とウイルスの多様な関係性を探る上できわめて有用な新技術(FLDS法)が開発・改良され,微細藻類と平和安定的に共存するウイルスの存在が検出可能となった。ウイルスと宿主の真の関係性を解明するための研究が、今まさに始まったところである。今回は,内湾で発生した藻類ブルームに共存するウイルスに関するデータを概説するとともに,水圏をフィールドとした新たなウイルス研究のビジョンについて概説したい。  
【自己紹介】京大農出身。1992年から国立の水産研究所で赤潮を巡るウイルス研究に約20年間に亘り没頭。やがてある日マネージメント部門への異動を命じられ、単身赴任生活がスタート。横浜から長崎、そして高知へと。趣味はテニスと音楽。ガッツある若手は大歓迎。何でも訊いて下さい。

主 催 京都大学ウイルス・再生医科学研究所
世話人 RNAウイルス分野 朝長 啓造 (TEL: 075-751-3997)