ウイルス研究の潮流シリーズセミナー:血中タンパク質AIMによる生体内異物除去機構を基盤とした新しい疾患治療パラダイム
| 日時: |
2017年6月7日(水)16:00 〜 17:30 |
| 場所: |
京都大学ウイルス再生研2号館(旧ウイルス研本館)1階セミナー室 |
| 演者: |
宮崎 徹 教授 東京大学大学院医学系研究科 |
| 演題: |
血中タンパク質AIMによる生体内異物除去機構を基盤とした新しい疾患治療パラダイム
|
講演要旨
生体内では、細胞の癌化や細胞の死、過剰な脂肪蓄積やタンパク質の変性など、生体にとり好ましくない、さまざまな異常が常に発生している。このような異物・不要物は通常マクロファージを始めとした貪食細胞によって速やかに除去され、組織の修復が誘導されることにより、生体の恒常性は維持され、疾患発症が制御されていると考えられる。私たちは、血液中に存在するAIM(文献1,2)が、貪食細胞による異物認識とその速やかな除去の要として働き、それが脂肪肝、肝細胞癌や急性腎障害(AKI)の抑制や治癒において重要な役割をはたしていることを見出した。通常、血中のAIMは脂肪細胞や肝細胞内に取り込まれ、脂肪蓄積を阻止し肥満や脂肪肝のブレーキになっている(文献3)。しかし興味深いことに、肝細胞が癌化するとAIMは取り込まれることなく細胞表面に蓄積し、速やかに細胞壊死を誘導する。この癌細胞除去機構により、AIM存在下では肝臓癌の発症が抑制されている(文献4、5)。一方、AKIでは、壊死した近位尿細管上皮細胞(デブリ)が尿細菅腔を閉塞し、糸球体濾過機能低下や炎症を惹起し腎機能を悪化させることが特徴であるが、私たちは、AIMがデブリの迅速な除去とそれに続くAKIからの回復を促す鍵となることを明らかにした。さらに、精製したAIMを投与することによって、AKIからの顕著な回復を促すことに成功した(文献6)。興味深いことに、こうしたAKIに伴うAIMの活性化がネコでは生じず、そのことがネコにおける腎不全の高発症率の原因であることも証明した(文献7)。すなわちネコの腎臓病はAIM投与により確実に治療し得る可能性が高い。今回の講演では、こうしたAIMによる異物認識・除去機構が、生活習慣病や肝臓癌、腎臓病、さらに多くの難治性疾患の新しい治療法となる可能性について、ヒト患者のデータも含め討議したい。
【参考文献】1) Miyazaki et al., J. Exp. Med. (1999) 189: 413. 2) Arai et al., Cell Metab. (2005) 1: 201. 3) Kurokawa et al., Cell Metab. (2010) 11: 479. 4) Maehara et al., Cell Rep. (2014) 9: 61. 5) Ozawa et al., Genes Cells (2016) 21: 1320. 6) Arai et al., Nat. Med. (2016) 22: 183. 7) Sugisawa, Hiramoto et al., Sci. Rep. (2016) 6: 35251.
| 主催 |
京都大学ウイルス・再生医科学研究所 |
| 世話人 |
附属感染症モデル研究センターウイルス共進化分野 宮沢孝幸(TEL: 075-751-4814) |