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京都大学 医生物学研究所

第 1260 回 急性、慢性放射線腸障害における自然免疫の役割

日時: 2017年2月10日(金) 16:00~17:30
場所: 京都大学ウイルス再生研3号館5階ルーフテラス
演者: 植松 智 教授(千葉大学大学院医学研究院粘膜免疫学・教授、東京大学医科学研究所国際粘膜ワクチン開発研究センター自然免疫制御分野・特任教授)
演題: 急性、慢性放射線腸障害における自然免疫の役割

講演要旨

高用量の電離放射線はDNAを傷害し、各臓器の放射線感受性に従って様々な病態を誘導する。5Gy以上では、陰窩の細胞におけるDNAダメージのために消化管が顕著に傷害され、消化管症候群と呼ばれる致死性の急性症状を呈する。癌抑制遺伝子のp53は、DNAダメージを伴う陰窩の 細胞死を誘導する必須の因子であるが、そのDNA修復能のために、p53を標的とした消化管症候群の治療戦略は実用不可能である。今回、我々は、自然免疫受容体Toll-like receptor 3 (TLR3)が、消化管症候群の病態において重要な役割をしていることを見出した。TLR3欠損マウスは、消化管症候群に抵抗性を示し、放射線誘導性の陰窩の細胞死が顕著に抑制されていた。一方、p53依存的な陰窩の細胞死は、TLR3欠損マウスでは障害されていなかった。P53依存的な陰窩の細胞死は、内因性のRNAの漏出を生じ、それらがTLR3を介する広範な細胞死を誘導していた。TLR3の特異的阻害剤が陰窩の細胞死を抑制することによって消化管症候群を改善したことから、TLR3を標的とした消化管症候群に対する新しい治療法の可能性を示すことができた。急性放射線障害に加えて、腹部放射線照射を受けた癌患者は、慢性腸炎を呈することがある。その副作用の中で、放射線誘導性の線維化(Radiation-induced fibrosis;RIF)は、最も重篤な症状を呈するものであり、イレウスと閉塞から患者のQOLを著しく低下させる。我々はRIFの誘導に腸管の好酸球と常在性の筋線維芽細胞が重要な働きを示すことを見出した。腹部放射線照射は、好酸球の集積と活性化を伴う粘膜下の線維化を誘導した。腹部照射後、慢性的な陰化の細胞死が誘導され、その結果細胞外にATPが漏出する。ATPは、常在筋線維芽細胞を活性化し、CCL11の誘導を介して好酸球を粘膜下に遊走させることが分かった。活性化した筋線維芽細胞は、GM-CSFも誘導し、それらが好酸球を刺激することによって、線維化に必須のサイトカインであるTGF-βを誘導させることが分かった。この様に、好酸球と筋線維芽細胞の相互作用によって、慢性期における粘膜下の線維下が進行していくことが明らかになった。

主催 京都大学ウイルス・再生医科学研究所
連絡先 ウイルス感染研究部門感染防御研究分野 竹内 理 (TEL:751-4024)